たびえもん旅の思い出 イスラムとブッダの巻

 かつてシリアを旅していたとき、地元の青年宅に泊めてもらったことがありました。昼間はサッカーをしたり、近所の遺跡を訪れたりして過ごし、そして夕方、モスクへ誘われました。

「アッラーアクバル」

 神は偉大なりという言葉に始まる礼拝の時間。町中の人が集まってくるのかモスクは満員、僕は最後列に並び、見よう見まねで屈んだり、鼻柱を床に付けたりして加わりました。周りで子供たちがクスクス笑っていました。

 思い出深いのはその後、イスラム教に勧誘されたこと。彼らは本気でそれが幸せだと信じ、誘ってくるのです。

「お前はクリスチャンか?」
「いや、ブッディストだけど…」
「なんだ、それは?」

 海外で宗教を問われたとき、僕はひとまず仏教と答えることにしていたのですが、それだけでは彼らを納得させられません。ブッダは神(アッラー)ではないこと、日本の文化でもあること、思わぬ宗教談義になりました。

 あれから十数年、内戦のシリアで彼らは無事か、いつか会いに行かねばと思うことがあります。(ふねしゅー)