たびえもん旅の思い出 陸路国境を越えていくの巻
ロシアのウクライナ侵攻に対して、ケニアの国連大使が行った演説が話題になりました。「私たちの歴史と重なる」とロシアを強く批判しつつ、英仏などの欧米列強に分割されたアフリカの苦難について語ったのです。
この話を聞いて、僕が思い出したのは二十年前、自転車世界一周旅行の途中でケニアを走っていたときのこと。
とある田舎町で出会った黒人の青年から「日本はアメリカに原爆を落とされたのに、なぜ仕返しをしないんだ」と問われました。同じ質問をアラブ人から受けたことはあったのですが、ケニアで聞いたことにとても驚きました。
「ケニアはイギリスに植民地にされた。いつかやり返すんだ」
青年はそんなことも言いました。
日本人にとって陸路の国境に馴染みは薄いですが、人工的に引かれた国境線は時に不安定で、絶対のものではありません。だからといって容易に書き換えることができるものでもない。
「危険なノスタルジアで過去を振り返り続けるのではなく、国境を受け入れることにした」
大使の言葉が、極めて重く感じられました。(ふねしゅー)